ウソつきより愛をこめて
「……」
遠くから子供の笑い声が聞こえて、私は重い瞼を開き焦点を天井に漂わせる。
熱があるせいか意識ははっきりしない。
さっきまでおでこにあった冷たい手の感触が、今は無性に恋しかった。
「…ふー…」
額にうっすらとかいていた汗を急いで拭う。
…なんて夢見てるんだ、欲求不満か。
風邪を引くと人だか肌が恋しくなるって言うけど、これじゃあただの変態じゃないか。
「おい結城、調子はどうだ」
「……!」
ぼーっとしていたところに横からいきなり話しかけられて、私はあからさまにびくっと身体を揺らす。
なんだか目を合わせるのが恥ずかしくて、橘マネージャーの顔を見ることが出来なかった。
「…まだ、いたの」
「いるに決まってるだろ。さっきより顔赤いな、熱上がってるんじゃないか」
「…やっ…!」
おでこに触れようとしてきた彼の手を叩いてしまう。
咄嗟のこととはいえ、気まずい空気が私たちの間に流れていた。
「しょうちゃんっ」
パジャマ姿から可愛いフリルのついたワンピースに着替えた寧々が、こちらに向かって元気に走って来る。
そのまま後ろから橘マネージャーの足に抱きついているのを見て、私は驚き目を見開いていた。
しょ…しょうちゃんって、なに!?