ウソつきより愛をこめて

「どうした寧々、もっと俺と遊びたいのか?」

「んっ!」

軽々と寧々を抱き上げた橘マネージャーに、寧々がとびきりキュートな笑顔を向けている。

…なに?いつの間にこの二人こんなに仲良くなってるの?

ていうか寧々を着替えさせてくれたのって、まさか…。

オムツ替えをしている橘マネージャーの姿なんてとてもじゃないけど想像つかない。

だけど寧々をあやしてる姿は、どことなく様になっていて…。

「……」

目尻を下げて愛おしそうに笑う彼の表情に、胸がズキリと痛む。

そんなに寧々が自分の子だったら嬉しいの?

父親になりたかったのなら、あの時少しでも私の話聞いてくれれば良かったのに。

どんなに後悔しても、あの日に戻ることなんて出来ない。

…私と橘マネージャーを繋ぐ絆なんて、最初からどこにも存在しないんだから。



「…勝手に寧々の事呼び捨てにしないで」

「別にいいだろ。寧々も、俺の名前気に入ったみたいだし」

「しょうちゃん、しょうちゃん!」

「寧々のママは薄情だなー。どーせ俺の名前なんて忘れてんだろ」

…何言ってんの。

そんなの忘れられるはずがない。

「…翔太」

声に出してみれば、その響きが不思議なくらい身体に馴染んでくる。

「翔太(しょうた)でしょ。それぐらい覚えてる」

< 53 / 192 >

この作品をシェア

pagetop