ウソつきより愛をこめて
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その日は商品整理が長引いて、閉店後にフロアを出られたのは二十一時すぎ。
エレベーターを足早に降りた私は、駅ビルの地下一階にある職員専用保育園へと一直線に向かっていた。
「あ、寧々(ねね)ちゃん。来たよ」
「……ママぁっ!」
「遅くなってごめんねー、寧々。ちゃんといい子にしてた?」
「泣かずにいい子で待ってたよ、ねーっ?」
「ねーっ!」
寧々がエクボを作りながら、指でほっぺをつつく先生に笑顔を向ける。
後ろから思いっきり抱きしめてあげたら、子供特有の優しく柔らかい香りがして疲れが吹き飛んだ気がした。
「由子(ゆうこ)、悪いけど来月からはもっと遅くなるかもしれない」
「いいよいいよ。気にしないで。クリスマスの後はすぐに年末商戦があるもんねぇ」
ここで保育士をしている由子は、実は高校の同級生。
そのよしみで急なお願いでも快く対応してくれるから、本当に助かってる。
「しかし大変だねぇ、その年で二歳の女の子のママやってるなんて」