ウソつきより愛をこめて
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「わぁー!!」
マンションとは逆方向の賑やかな通り沿いに向かうに連れて、寧々から上がる歓声が大きくなっていく。
遊歩道のケヤキ並木に彩られた、数十万にも及ぶLEDライトの光。
この街では毎年十二月初めから年末までこのイルミネーションイベントが催され、多くの人がその光景を見るためにこの地へ訪れる。
昔から私はこの景色が大好きだった。
何度見ても、この迫力と美しさに心が奪われてしまう。
「そっか…もうそんな季節なのか…」
光の渦に釘付けになっていた私は、独り言のようにそう呟く。
最後に見に来たのは、確か高校最後の冬休みだったっけ。
この地にせっかく帰ってきたのに、去年もこの時期は忙しく、店と家の往復ばかりで私には無関係なイベントになってしまっていた。
「キラキラ~…」
「そうだね。お星様がいっぱいの天の川みたいだね」
寧々はフロントガラスにかじりつきながら、無数の光を前に目を輝かせている。
「…結城。俺が最初に言ったこと、まだ冗談だと思ってるか」
「……え?」
前を向いて運転に集中していたはずの橘マネージャーから突然話しかけられて、私はイルミネーションから彼の背中に視線を移していた。
「俺の気持ちは全く変わってない」
「……」
「…お前と結婚したいんだ」