ウソつきより愛をこめて
必死すぎる橘マネージャーに圧倒されて、私は思わず息を飲む。
「わ、わかったから…ちょっと離れてくれる?」
お互いの吐息が顔にかかりそうなくらいの近さに、私はもう色んな意味で限界に達していた。
だってそんなことを今更言われても、信用できるわけがない。
いくら結婚したいがためだからって、これは反則だ。
出来ることなら、あの時に言って欲しかった言葉。
散々身体を求める前に、伝えてほしかった気持ち。
そんな、今更どうしようもない思いが、私の中に少しずつこみ上げてくる。
「悪い。お前といると…俺、めちゃくちゃ調子狂うんだ」
キレイな顔を歪めて、橘マネージャーは自分の前髪をかきあげている。
やっぱりイケメンは得だ。
無駄なフェロモンを振り撒いてくるから、まんまと騙されそうになってしまった。
「…何やってんだよ」
「明日からのクリアランスセールの準備に決まってるでしょ!ゆりちゃんいなくなっちゃったから、私ひとりでやんなくちゃいけなくなったの!」
すぐに立ち上がって商品を移動し始めた私を、橘マネージャーがありえないだろと言わんばかりに凝視している。
「…お前のその切り替えの早さは、見習わないといけないな」
「えっ?何か言った?」
「いや別に…。それであと、どれくらいかかりそうなんだ?」