アヤカシたちのお妃候補は人間の女の子でした
それから私たちはそのままでいた。
道行く人たちの視線に気づいていない訳ではない。
多少、気にはした。それよりも頭がいっぱい過ぎたんだ。
私は戸惑う。どうしたらいいのかが分からない。
どちらかに声をかける? それともそのまま逃げる? ──いや、絶対に駄目。
「彰様!? それに晴彰様まで! どうされたんですか」
ふいに黒髪の少年が話しかけてきた。
ところどころ金髪のメッシュが入っていて、チャラい第一印象。
でもスーツを着ているっていう、フォーマルな服装。
よくわからない人。私はその程度にしか思わなかった。
「あれ? 人間がいる……??」
その少年は私に気付いたのか、目を輝かせてこちらをみた。
私は思わず彰さんの後ろに周り、袖を掴んでしまう。
その所為か頭上から喉で笑う声が聞こえた。
「そなた、私に惚れたのだな」
「違いますからっ」
全力で否定してから、私は彼の袖を離した。
金髪メッシュの少年は不思議そうに私を見ている。
しかし、すぐに顔を曇らせる。
「……中野亜美様ですね? 貴方はこの先」
「取りあえず、白夜様にご報告に行きましょう」
少年が何かを言いかけたけど、晴彰さんがそれを遮った。
……まただ。私は、なんなのだろう。
アヤカシたちにとってなにか特別なのかな?
でも、そんなことよりも“白夜様”とか言う人、いや、アヤカシが気になる。
そしてそれよりも少年が気になる。
だっていきなり出てきたんだもの。それは気になる。
「あ、ちなみに僕はタケルといいます」
「…………」
……わかっちゃったじゃん。
私の悩んだほんの少しの時間返してほしい。
わかっていいんだけれども。
ふいに、彰さんに抱きかかえられた。
ん? 抱きかかえられた!?
私はびっくりしたのと恥ずかしくて、手足をじたばた動かした。
「何やってんですか彰さん!」
「見ての通り、姫抱きをしているのだが?」
真顔でいう彰さん。いや、真顔で言われても困るから。
そんな私の心もむなしく、目的地に着くまで私は下ろしてもらえなかった。