アヤカシたちのお妃候補は人間の女の子でした
「とりあえず、晴彰さんは彰さんのことを慕っていないと」
『つまり晴彰さんは彰さんが大嫌いだと』
本当はこう言ってやろうと思った。
けれどもそんなにストレートに言ったら傷つくのではないかという優しい気遣いで、言葉かなりまろやかにした。
晴彰さんは小さく頷くと、喧嘩している2人を引き離す。
「やめてください! 女性がいる前で。ここはあなた方の世界じゃないんですよ、人間界なんです」
彼は厳しい顔で声を荒げるけど、全く効き目がなさそう。
2人は未だになりふり構わず殴り合っている。
せっかくの綺麗な顔が台無しになるのでは……。
というか、お腹空いた。
私は不安になりつつも、とりあえず一階に下りて朝食を食べることにした。
ドアを開けようと手を伸ばすと、誰かに腕を掴まれる。
「友也さん……」
「何処行くんだよ」
「朝ごはんを食べに行こうかと……」
「それなら俺たちの世界で食えよ」
俺たちの世界っていうとどう考えても異世界ですよね。
つまり私にそこに行けと。
「なんでですか? 友也さん」
「友也でいい。だってお前は今から俺たちのお妃候補なんだからな」
それさっきも聞いたんだけど、私まだ12歳です。
嫁げないんですけど。というか絶対に嫌です!
アヤカシに嫁ぐなんて、ムリ。
だいたい、この人たちのことよく知らないし。
それに、なんで私なんだろう。