クリスマスプレゼント
もうとっくに外は真っ暗で、凍てつくような風が、コートの上から僕を刺していく。ようやく僕と陽子が肩を寄せあって暮らす小さなアパートに着き、部屋の前に立った。僕はかじかむ手で鍵を探し当て、部屋に滑り込むように入ると、いい匂いが鼻をくすぐった。


僕の好きなカレーの匂いだ。


台所に行くと、陽子が長い黒髪をまとめ、腕まくりをして、鍋のカレーをおたまでかき混ぜていた。僕に気づくと、彼女はコンロの火を消して振り向き、にっこり笑ってくれた。


「お帰りなさい」


職がなくて、落ち込んで帰った時でも、陽子のこの声を聞くと、きっと元気が出た。人工的で技巧的なところがない、明るく人を慈しむような声。それは、天性のものだった。


「ただいま。陽子、今日はクリスマスイブだね。実はクリスマスプレゼントがあるんだよ」


コートを脱いで、ポケットからあの包みを取り出し、陽子に手渡した。陽子はびっくりしたように、僕と包みを交互に見つめていたが、やがて嬉しそうに包みを開き始めた。


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