クリスマスプレゼント
午前中の求職活動が終わり、ハローワークも昼休みになった。僕は弁当を抱えて、近くの公園へ足を運んだ。いつもはここでコンビニ弁当を食べるのだが、今日は違う。僕はうきうきと弁当の包みを広げた。
その弁当は、高校で美術部だった陽子らしい弁当だった。
つまり、白いご飯の上に、緑色に彩色されたごまと金ごまで、きれいにクリスマスツリーの絵が描いてあり、ツリーの下には桃色のでんぶでハートマークがかたどられていたのである。おかずは、僕が好きな甘めの卵焼きだけだったが、これを作るのにどれだけ集中し、また時間がかかったことだろう。
クリスマスカラーの、初めて食べる愛妻弁当。陽子の優しさが口一杯に広がる。僕にとっては、最高のクリスマスプレゼントだった。新婚の時にこれを食べても、これほど感動しなかっただろう。苦労を共にしてきて初めて分かる味なのだ。
僕は携帯を手にして、陽子にメールを打った。
「陽子。弁当、ありがとう。なんだか第二の新婚気分を味わえたよ。最高のプレゼントだ」
そこで僕は、打つ手を休めてしばらく考えたが、心が荒んでいた最近はめったに言わなくなってしまった言葉を綴った。
「愛しているよ、陽子サンタ」
送信ボタンを押してから、僕は晴れ晴れした気分で空を見上げた。きんと冷えるが、空気は澄み、太陽の光がよく当たる、冬の晴れ空だった。
僕のサンタは、トナカイが引く橇に乗っていないし、ひげもない。家にはクリスマスツリーも煙突もない。それでもクリスマスはやってくる。
指輪のペンダントと、初めての愛妻弁当。それは、風変わりな、しかし僕たちだけのささやかな幸せがたくさん詰まった、唯一無二のクリスマスプレゼントなのだ。
(了)
2013.12.24 Frohe Weihnachten!
その弁当は、高校で美術部だった陽子らしい弁当だった。
つまり、白いご飯の上に、緑色に彩色されたごまと金ごまで、きれいにクリスマスツリーの絵が描いてあり、ツリーの下には桃色のでんぶでハートマークがかたどられていたのである。おかずは、僕が好きな甘めの卵焼きだけだったが、これを作るのにどれだけ集中し、また時間がかかったことだろう。
クリスマスカラーの、初めて食べる愛妻弁当。陽子の優しさが口一杯に広がる。僕にとっては、最高のクリスマスプレゼントだった。新婚の時にこれを食べても、これほど感動しなかっただろう。苦労を共にしてきて初めて分かる味なのだ。
僕は携帯を手にして、陽子にメールを打った。
「陽子。弁当、ありがとう。なんだか第二の新婚気分を味わえたよ。最高のプレゼントだ」
そこで僕は、打つ手を休めてしばらく考えたが、心が荒んでいた最近はめったに言わなくなってしまった言葉を綴った。
「愛しているよ、陽子サンタ」
送信ボタンを押してから、僕は晴れ晴れした気分で空を見上げた。きんと冷えるが、空気は澄み、太陽の光がよく当たる、冬の晴れ空だった。
僕のサンタは、トナカイが引く橇に乗っていないし、ひげもない。家にはクリスマスツリーも煙突もない。それでもクリスマスはやってくる。
指輪のペンダントと、初めての愛妻弁当。それは、風変わりな、しかし僕たちだけのささやかな幸せがたくさん詰まった、唯一無二のクリスマスプレゼントなのだ。
(了)
2013.12.24 Frohe Weihnachten!


