偽りの愛は深緑に染まる

 上映が終わり、感想を話しながら映画館を出ると6時をまわっていた。そのまま近くのレストランで夕飯、ということになる。

 18階にあるそのレストランは、以前にも何度か来たことがあって、東に面した壁がガラス張りになっているため街が見渡せる。

 ここに来ると、梨沙はいつもこれは全部夢なのではないかと思う。こんないい思いをしていていいのか、とも。場違いだとも思った。

「いつ来ても、ここ素敵。高い所すごい好き」

「俺も好きだよ。景色が見渡せるっていいよね」

 社長だから、やはり高い所から見下ろすのは好きなのだろうか。たとえ、そんな人には見えなくても。

 ああ、そういえば平社員でも、人を見下ろすのが好きな奴がいたっけ……。

 佐渡山の顔が浮かぶ。彼は一体懸賞応募のために一ヶ月にいくら使っているのだろうか。

 そんなことを考えていると、

「何考えてるの?」

 光流さんが言った。
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