偽りの愛は深緑に染まる
整った眉を難しげにひそめ、光流はタブレットの上に指を滑らせ、秘書の滝口を呼んだ。
常に開いているのかと思うほどの速さで既読がつき、「向かいます」の返事が自動返信のごとく即座に送られてくる。

程なくして、黒いスーツをボタンで首が締まらないか心配になるほどかっちりと着こなし、頭を撫で付けた小柄な男性が入ってきた。

光流の秘書、滝口は、光流と1つしか違わない。もともとは光流の大学時代の後輩だ。社長同様、かなりの若さで要職に就き、一切隙のない仕事ぶりで活躍している。

「朝一番にメッセージで私を呼ぶのは、なかなか珍しい気がします。何かあったんですか?」

滝口の質問に、光流は鋭い目つきで間髪入れず答えた。

「調べてほしい奴がいる」
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