偽りの愛は深緑に染まる

 彼は、ある企業の社長だった。年齢は31。7才年上だ。

 彼の出してきた愛人話の内容を聞いて梨沙は思わず笑ってしまいそうになった。

 週一回会うだけで、月20万。

「いやいいです、そんなうまい話あるわけがないですよ」

 梨沙が言うと、彼は懐から名刺を出して渡してきた。

「う……そ」

 名刺には、「株式会社LIFT 代表取締役 遠山光流」とあった。

「LIFTって、あの家具屋ですか?」

「ああ。君が想像しているので合ってるはずだ」

 すごい。家具のLIFTといえば、知らない人はいないのではないか。ここ数年で一気に主要な家具メーカーに登りつめた会社だ。デザイン性を重視し、若い世代からの評価は最高だ。

「そんな、すごい人がどうして私にこんなこと頼んでるんですか……」

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