偽りの愛は深緑に染まる
迷った挙句、時間をおいて返信し、今日はもう遅いので……とやんわり断ることにした。

気が気でなく何も手につかなかったが、21時を過ぎた頃、やっとメールを返そうとスマホを開いた。

メールボックスには通知が2件。

一つはダイレクトメール、もう一つは……

「……!光流さんだ」

心臓が早鐘を打つ。中を見るのが怖いが、開かなければもっと怖い……というかこれ以上うだうだと悩む時間ももったいない。

『今日は無理かな? いきなり言われても困るよね。大したことじゃないから、また土日に会ったときに』

「……へ?」

梨沙は拍子抜けしてしまった。

あれだけ悩んだのに、向こうから終了してくれた。

「はははは、なーんだ、もう、これでよかったのかー」

不気味にも独り言を言ってしまう。自分がアホらしくなってスマホをベッドの上にボフッと投げた。

「風呂入れてこよーっと」

ひとまずは、すっかり心が軽くなったが、この裏で取り返しのつかないことが進行しているなんて、夢にも思っていなかった。
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