偽りの愛は深緑に染まる
思い返せば、火曜日に会社のエレベーターで一緒になったとき。

佐渡山は梨沙を見るなりエレベーターの隅に張り付き、怯えたような顔をしていた。

水曜日に食堂でたまたま前後に並んでしまったときは、佐渡山は列から抜け出してどこかへ行ってしまった。

明らかに彼は挙動不審だ。何があってそうなったかなんて、考えるのもまた面倒臭いが。邪魔者がいなくなったと喜んでおけばいいのだろうか。

家に帰り、適当にパスタを作って食べる。土曜日のゴミをまとめ、長めの風呂に入った。
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