その結婚、取扱い注意!
「バリ? タイじゃないのか? おかまの聖地だろ?」

湊の突っ込みに美里ママは口をへの字に曲げる。

「タイはねーきれいなニューハーフばかりだからぁ」
「なるほど、比較されたくなくてバリか」
「バリ島、いいですね」

湊の美里ママをからかうモードを断ち切るように口を出す。

「そ、そうなのよー。バリってステキなところよーのんびりできて、みんなも楽しんでたわー」
「みんなの楽しそうな顔が想像できます」

そんな会話をしていたから、1階に到着していたエレベーターは再び上へと上がって今度は人が降りてきた。

降りた年配の男性は美里ママを見て一瞬ギョッとしてから、急いで目をそらして行ってしまった。

湊の腕が私の腰に回り、エレベーターに誘導される。

「美里、お前は次のエレベーターな」

美里ママが言うことを聞かないスーツケースを引っ張ろうとしていると、湊はさっさと「閉」ボタンを押してしまった。

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