その結婚、取扱い注意!
ちょうどピザが焼き上がったところで、大皿をテーブルに置いているところだった。

「みなさ~~~~ん、食べてね~ メリークリスマスぅ」

美里ママは忙しそうにピザを取り分けてお客様に渡している。

私は美里ママに近づいた。

「美里ママ、私帰りますね」
「ええーっ! ミミちゃんたら、もう帰るのぉ? つまらないぃ?」

姉のような心配そうな顔をぐいぐい近づけてくる。

「つまらなくないです! 楽しいクリスマスパーティーです。朝から動きっぱなしだったんでちょっと疲れちゃったみたいで」
「ほんとにぃ? 湊、来ないのかしら。連絡は?」
「ないです。お仕事なので来られないのは仕方ないです」

物わかりのいい奥さんを演じているだけ。本当は寂しくて早く会いたい。いつもならこんな思いにならないのに、今日はクリスマスだからなのか、そばに居てほしい。

「えらいわ~ 湊の立場もあるからねぇ。じゃあ、気をつけて帰るのよ? ホストや見知らぬ男に付いて行ったらだめよ?」
「も、もちろんですよ。いつもどおりひとりで帰れます」

白いカシミアのコートを羽織ると、階段を下りて出口まで美里ママが送ってくれる。

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