極上エリートの甘美な溺愛
今日一日を一緒に楽しく過ごし、一気に二人の距離を縮めたとはいっても、自分はまだ玲華に恋人として受け入れられたわけではない。
玲華を諦めるつもりはないとはいえ、今、彼女から自分を拒むような言葉を落とされるのは避けたい。
今はふたりで笑い合った今日一日の優しい時間に浸っていたいと思うのが、正直なところだ。
するとそんな将平の気持ちを察した玲華が焦りながら笑顔をつくった。
「あ、大丈夫。なんでもないの。私、将平との未来を信じられないなんて言えるほどの人間じゃなかったなって、そう思っただけで……」
玲華はそれだけを呟くと、再び黙り俯いた。
あまりにも素っ気なく、別れたとはいってももう少しお互いを気にかけても良かったんじゃないかと自己嫌悪に似た思いに囚われる。
恋愛感情の移ろいにいい思いを抱いていないという将平の言葉を否定するなんて、自分にはできないと玲華は思った。
自分だって、将平が恋愛を躊躇する原因となった女の子と同じじゃないかと感じ、自分を責める。
一旦恋人と別れてしまえば、どれだけ楽しかった過去でさえ振り返ることもなく自分の時間だけを進めていく。
恋人だった男性を思い出す機会すらほとんどなく過ごしていることに気付き、玲華は自分が冷たい人間のように思えて肩を落とした。
将平は、黙り込む玲華に何かを言おうと口を開いたが、ちょうど目の前の信号が青に変わった。
その瞬間、将平は軽く舌打ちをした。
玲華の変化に戸惑っているようだ。
玲華を気に掛けながらも運転を再開した将平を横目で見ながら、玲華は何をどうすればいいんだろうかと落ち込む。
それから、玲華は窓の外を流れる景色を見るふりをしながら、家に着くまでずっと、黙っていた。