極上エリートの甘美な溺愛
「美保のことを言われると、玲華にも、美保にも頭を下げるしかない。玲華は純太と付き合うんだと思うと寂しくてつい、美保の気持ちを受け入れてしまったんだ。でも、結局、美保と幸せな時間は作れなかったうえに、優しくもできないまま傷つけて……別れた。本当に悪いことをした」
玲華を力なく見つめながら、うなだれるように呟く将平は、当時の自分を後悔し、恥じるように口元を歪めた。
切なさに苦しみながら欲しいものをどうすれば手に入れられるのかを考えるよりも、手近にその切なさから逃げられる場所があるのなら。
「簡単に逃げたんだ、俺は」
まだ高校生だったあの頃の将平、そして玲華。
理想や正論ばかりを貫ける強さなど、持ち合わせていなかった。
将平が恋愛への偏った先入観を盾にして、いつか玲華も自分から離れていくと。
拗ねたような気持ちに従ったせいで、結局は玲華を好きだという気持ちを封印し、楽な未来へと逃げた。
それでも、高校生の頃の純粋な気持ちは純粋なまま将平の心に、そして玲華の心にも居座り、お互いの存在を完全に消し去ることはできなかった。
大人になった今なら、あの頃うまく向き合えなかった自分の弱さと狡さから目を背けることなく、そして、玲華を自分のものにすることにも躊躇しない。
将平はこれまで何度も後悔し、繰り返した思いを胸に秘め、玲華への愛しさを視線に乗せて伝えようとした。
すると、玲華はそんな視線を受け止めながら、小さく呟いた。
「純太は、将平の気持ちを知っていたのかもしれない。じゃなきゃ、私にもう一度将平に告白してこいなんて言わなかったと思う」
「……ああ、そうだな」
「将平は……私のことを純太に譲れるくらいだから、私を、それほど好きじゃなかったの?」
「違う、そんなことないんだ、好きだった……。だけど、今ほど強い気持ちではなかったんだと思う。だけど今は、篠田さんが玲華にプロポーズするんじゃないかと慌てて来てしまうほど、好きだ。ごめん、今更、狡いとは思うけど、狡くても、俺は玲華が好きなんだ」
まるで謝罪の気持ちを伝えるかのように、何度も『好きだ』と口にする将平の表情からは、何かに追いつめられた不安が見え隠れする。
あの頃、玲華を誰かに譲るなんてことがどうしてできたのだろうかと、過去の自分が信じられない。