極上エリートの甘美な溺愛


けれど。

きっと、ここまで慌てて来たに違いない将平の姿をみるうちに、頑なな玲華の気持ちはほぐれていく。

スーツの上着も着ていない、そして手には何も持っていない将平の額の汗を見ていると、今まで不安に感じていた幾つかがふっと小さくなったような気がした。

淡いブルーのカッターシャツの袖をまくりあげ、黄色のネクタイをこぶし一つ分くらい緩めている。

会社から急いで来たに違いないその様子は、それだけで玲華を求める将平の気持ちを見せてくれるようで。

玲華の気持ちを将平に全て向けるには十分なもの。

「かなり、急いで来たんだね。……手ぶら?」

へへっと笑いながら、漂う緊張感を解くように玲華は呟いた。

「あ……ああ。慌てて出てきたから、ポケットにあったスマホと小銭だけでここまで来たんだ」

自分の様子にやっと気づいたのか、将平は頭を掻きながら照れた。

将平の会社からここまで、電車でわざわざ来たのかな。

それほど遠くはないけれど、どうしてこの時間にここに来たんだろう。

それも、篠田との関係を大きく誤解して。

「あー、電車に乗ってる時間が長くて仕方がなかったよ。篠田さんに玲華かっさらわれたらどうやって取り戻そうかと、体が震えて仕方がなかったよ」

ほっと息を吐きながら呟くその言葉に、玲華は何をきっかけに将平がここに来たのか、不思議に思った。

時計を見ればまだ14時を少し回ったところ。

将平だって仕事の最中だろうし、篠田からプロポーズされるだの、そんなありえないことを信じるなんて、おかしすぎる。


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