レンタル彼氏【完全版】
「どーしてここにいると思った?」


「なんとなく」


「ふーん、メール見た?」


「見てない」


「ふーん」




…………


なんだ、その興味なさげな言い方は。
聞いてきたのは伊織だぞ?


少しムッとした私はわざとレンタル彼氏の話題を出してやろうと、話を切り出した。



「伊織、三万いつ払えばいい?」


「え?」


「だから、三万」



私がそう言うと、伊織は掴んでいた腕を放した。



「……………」


「い、おり?」


不思議に思った私は伊織の顔を覗きこむ。

「……っ」


そして息を飲んだ。




伊織の顔は。




無表情。




それが正しかった。



「…いつ」


「え?」


「いつ払える」


「あ、え、えと来週には」


「………」


「…………」




黙ったまま伊織は私を置いて歩こうとするから、私は伊織を見失わないようについていった。
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