『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
どちらかというと、覗き見という行為や永岡先生その人に興味があった。

しぼられた視界のなかに、化学準備室の窓が映る。

あわだつ期待は、つぎの瞬間失望にとってかわった。
窓はカーテンで、ぴっちり閉ざされていた。

スカートと違って、めくる手だてはなさそうだ。めくった経験はないが。


いったん双眼鏡をほうって、組んだ手の上にあごをのせる。


永岡先生は、夜な夜な遅くまで化学準備室にこもり、ときには泊まりこんでいるという噂だった。

なにをしているのやら———僕の悪趣味な好奇心は、布切れ一枚でさえぎられた。


さて、どうしたものか———


風が強くなってきた。
屋上の、さらに少し高みにある、さえぎるものとてない、塔屋の上だ。

耳元を吹きすぎる風が、耳鳴りに似た音をたてる。
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