『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
カーテンが開くかもしれないわずかな可能性にかけてここで粘るか、それとも諦めるか———



・・・・かすかな、虚ろを風が吹きすぎるような、かすかな音がする。

反射的にそちらに首をひねり、すばやく身体をひき起こす。
陸上のクラウチングスタートのような体勢で、音の正体にそなえる。僕も登ってきた鉄ハシゴのほうからだ。

“ 何 ” だ———

背筋に緊張がはしる。


かつっ、

白い手が、コンクリートのふちからのぞく鉄ハシゴをにぎる。
小さな爪、きゃしゃな指の関節。女の手だ。

くっ、と力が加わり、かすかに揺れながら、黒くつややかな頭部につづいて白い顔がのぞく。西森だ。

あぶなげなく身体を引き上げ、塔屋におりたつ。
手首には器用に鞄をひっかけている。


僕は今日ここにいることを、彼女には言っていない。
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