Sweet Room~貴方との時間~【完結】
――ぐぅー

 このタイミングで、何で鳴るのよ。
 杉山は半笑いでこっちを見た。

「朝ごはん、食べよう」
 生きてればお腹空くでしょ。朝だし、朝ごはん食べたいし。

「ぷっ、あはっははははっははーー」
 一瞬の沈黙のあと、杉山が笑い出した。しかもベッドに倒れ込みながら。

「ちょっと、そんなに笑うことないでしょ。生理現象!!!」
「はあ……。わかってますよ。すみません。ここのホテル、1階がスーベニアショップあるんで、何か買ってきますよ。何がいいですか?」
「お任せします」

 笑いが治まった杉山は、目に微量の涙を浮かべていた。
 お腹鳴らしたくらいで、泣くほど笑うな!

「わかりました。俺、1時間ぐらい時間潰してくるんで、シャワー浴びたいならどうぞ。何かいるものあったら、携帯に連絡ください」
「ありがとう、杉山」
「いいえ」

 杉山はベッドから立ち上がり、椅子に掛けてあったジャケットを着て、携帯とサイフ、カードキーをポケットに入れた。
 昨日の夜から相当迷惑かけたのに、杉山は私に気を使ってくれる。
 ベッドから降りて、ドアを開けようとしている杉山の背中に声を掛けた。

「ごめん、勢いよく突き飛ばして」
「いいですよ。大丈夫ですから。気にしないでください」

 俯き加減で、杉山の顔を見る。そこには妹を見る兄のような表情をした杉山がいた。そのまま杉山は部屋を出た。
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