狂妄のアイリス
 ドアノブをひねり、扉を押し開ける。

 その先には、信じられない光景が広がっていた。

 扉を開けてまず目に入ったのは机だった。

 私の部屋にある物よりもずっとシンプルで、シックなデザインをしている。

 なんの変哲もない机。

 でも、その机の上にあったのは信じられない物だった。


「どういう、こと……?」


 私は部屋に足を踏み入れ、それを手に取る。

 それは殺人の証拠でもなんでもない。

 ただの高校の教科書だった。

 でも、だからこそ異常だった。

 この本が、部屋の主が誰なのかを教えてくれる。

 この部屋はおじさんの部屋じゃない。

 ここは、日向さんの部屋だった。

 自分で気づいて、樹に話を聞いて、分かったつもりになっていた。

 でも、現実はそれ以上だった。

 私はいったいどれだけの物から目を逸らし続けてきたんだろう。
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