狂妄のアイリス
 日向さんと過ごす時間は、私にとってかけがえのない物だった。

 たまに公園で会うだけの関係。

 近所に住んでるって聞いたけど、具体的にどの家かまでは知らなかった。

 だから余計に、会えた日は幸せで嬉しい。

 日向さんと一緒にいると、安心できる。


「もう、日が暮れるね」

「冬は日が早いですから」


 だから、さよならの時間はとても名残惜しい。

 夏だったら、もうちょっと一緒にいられたのに。

 日が傾くにつれて、気温もどんどん下がっていく。

 このままだと、私だけじゃなくて日向さんまで風邪を引いちゃう。


「勉強の邪魔してごめんなさい」

「いい気分転換になったよ。ありがとう」

「これも、ありがとうございました」


 マフラーを返そうと手をかけると、その手に日向さんの手が重なる。
< 35 / 187 >

この作品をシェア

pagetop