狂妄のアイリス
「風邪引いちゃうといけないから、このまま羽織って帰って」

「は、い……」


 触れた手が熱くて、どぎまぎしてしまう。

 これって恋なの?

 それとも、もっと別のなにかなの?


「今度会ったときに返してくれたらいいから」


 今度、の言葉が甘く響く。

 私だけじゃなくって、日向さんもちょっとは会える時を楽しみにしてくれてるのかな。

 って、やっぱりちょっと期待しちゃう。


「そうだ、これあげる。さっきココ怪我してたでしょ」


 そう言って指さしたのは、手首。

 差し出されたのはバンソウコウ。


「じゃあね」


 そして、颯爽と日向さんは立ち去ってしまった。

 残されたのは、日向さんのマフラーを羽織って、空っぽになった缶ココアとバンソウコウを持った私だった。
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