狂妄のアイリス
「熱、どうだ?」

「うん。もう平熱みたい」


 結局、熱が下がるまで三日かかってしまった。

 その間、ずっと私はソファーで寝ておじさんは床で寝ていた。

 おじさんには申し訳ないけど、嬉しかった。

 今日からはまたそれぞれの部屋で寝ることになるのかと思うと、ちょっと寂しい。

 平熱を示す体温計の電源を切って、ケースに仕舞う。


「それはなにより。でも、今日一日ぐらいは大人しくしてろよ」


 私から体温計を取り上げて、おじさんは代わりにマグカップを押しつける。

 マグカップの中には、白い液体が並々と注がれていた。

 ミルクの香りがする。


「ありがとう」


 口をつけると、ほんのりとハチミツの甘みがあった。

 火傷するような熱さはなくて、すぐ体に馴染んで芯から温まっていく。

 日向さんのココアが脳裏を過ぎる。
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