3つのR


 傷付いた顔をしながらも諦めない龍さんに、私は思わず笑ってしまったのだった。私はとにかくその携帯電話を受け取った。思い通りの反応をしてくれないと彼はしばらく膨れっ面をしていたけれど、その内に携帯電話を手に取って自分で入力し始めた。

「俺のアドレス、電話番号。それから山神の店の電話番号ね。お姉さんや友達と食べに来てよ。俺、張り切るからさ」

 すごい勢いで両手でボタンを打っていた。私はその早業に感心してしまって、また返事がないって叱られたのだった。

 私は若干ドキドキしていたけれど、それは渡された携帯電話と一緒に自分の部屋において来た。それから少しテレビを観て、姉を呼び、3人で龍さんの作った素晴らしいご飯を食べたのだった。


 そんなわけで、今も私の部屋の机の上には彼から貰った携帯電話がある。

 ぼんやりとそれを眺めていたら、ドアがノックされて姉の顔が覗き込んだ。

「仕事してた?あのね、今日これ来てたみたい、新聞に挟まっちゃってて気付かなかったのよ」

「何?」

 姉が渡してくれたのは葉書だった。それには懐かしい大学時代の友達の名前が記されていた。そして、手書きのメッセージと電話番号が。

 ―――――――――潤子、元気?実は、この正月に結婚したの。式は挙げずに親戚だけで食事会をしたんだけど、皆がパーティーを企画してくれたみたい。それで、ちょっと話したいから時間がある時に連絡をくれるかな?

 葉書は写真つきで、そこには花嫁姿で微笑む友達の千草とそのダンナ様が。

「おおー!」


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