ラベンダーと星空の約束
 


あの本を読んだ時、
私と流星のあの夏が描かれていると思ったけど、
全部空想だったのか…



メッセージカードの写真と私の書いた文字から想像した物語。

ヒロインは私だけど、私じゃない女の子。



でもそれなら…

何で想い出と重なる場面が出てきたの?

忘れているはずのあの夏が、体験したかの様に鮮やかに描かれていたのはなぜ?



眠っている記憶のカケラを、無意識に取り出したとでも言うの?



もしそうだとしたら…

流星が記憶を取り戻す可能性は、残されているのかな…


あの夏を思い出してくれたなら、誠実で真面目な流星に戻ってくれるのかな…



一瞬そんな期待をしてしまい、すぐにダメだと言い聞かせた。



期待を破壊された時の衝撃はかなりの物だ。


“大ちゃん=流星”だと知った瞬間の様に、崖から突き落とされるのはもう嫌だ。




知るだけでいい。

私の知らない5年の間、何をして何を考え生きてきたのか…
それを知るだけでいい……




私と流星の心が通い合うことは二度とないのだ。

自分にそう言い聞かせ、流星の目を真っすぐに見た。



現実でどうにもならないのなら、せめてあの本の中だけは……




「流星…
あの本の結末、書き直してくれない?」



「何で?良くなかった?
悲恋が結構評判良かったんだけどなー」



「あの少女はあんなラストじゃ幸せになれないよ……

私なら、辛くても苦しくても好きな人と一緒にいたい。

一緒に生きられるなら、その後の悲しい別れに傷つくのなんか怖くない」



「……… ゆかりちゃん…今…押し倒してもいい?」



「え? 私、真面目に話してるのに何で……」



「ごめんごめん。
ドライな君が、急に乙女な事言うから息子が反応しちゃってさ〜」




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