ビターオレンジ。
初めてその時、咲さんをお母さんと呼んだ。
せめて生きているうちに言ってあげたかった。
今更後悔しても遅いけどね。
私が熱を出さなければ…
あんなに天気が悪い日に病院へ連れて行くなんていう咲さんを止めていれば。
私の大切な人は今もきっと傍にいた。
結婚だって決まってたんだ。
一週間後には結婚式だった。
凄く張り切っていて。
ドレスだってブーケだって、会場も全部決めた。
やっと咲さんのウエディングドレスが見れると思ったのに。
最高に嬉しそうに…幸せそうにする咲さんが見れると思ったのに。
自分の不甲斐なさが悔しくて。
でももうそれにも呆れるしか私には出来ないんだ。
だってもう、
咲さんはいないから。