ビターオレンジ。

寒いねなんていって過ごすこの時間が好きだった。




お互いの持ってるお菓子を交換したり…


というか本宮君のお菓子はブラックチョコレートのみなのだが…。




ご飯を食べに行ったり、今までと同じように過ごしてきた。




だから余りにもそんな時間が楽しくて。



本宮君がどんな気持ちで私と過ごしているかなんて知らなかったんだ。


知らずに私だけ笑ってたんだ。



「そろそろ次の授業始まるよ。」


「うん。じゃ。また帰り来る。」




短い会話で別れて、また後で少しの時間一緒にいる。


今日もそうなると思い込んでいた。





「彼方…」

「…え?」


初めて苗字ではなく名前で呼んだ。

だけど、当の本人は悲しそうに笑うだけで直ぐに私に背中を向けた。





折角頑張ったのにな。

折角ちょっとだけ勇気を出したのに。





いつもみたいに素直じゃない私ではなかったのに。


ガチャンッ…


ドアが閉まる音がやけに耳に残っていて、

屋上から見える木もなんだかザワザワと揺れていた。



冷たい風が私の頬を撫でて、

胸騒ぎと同時に嫌な予感がした。






晴れていた空はすっかり曇り、


今にも雨が降りそうだ。




どこまでもどこまでも不吉を表すかのように灰色の空が広がっていたのを今になって思い出す。





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