ビターオレンジ。
そして、楽しそうに揺れる本宮君とその隣に並ぶ影を見ながら思った。
私の居場所は無くなったんだと。
いや、自ら失くしてしまったんだと。
どうしてかはわからない。
だけど、自分のせい。
何の解決もないまま隣の自分の家へと帰った。
曇り空が私を見て嘲笑っているようだった。
ポケットの中のキャンディーがコロリと転がって、歩くたびに音を立てた。
玄関に入り誰の靴もない家。
今日は斗間君、帰りが遅いって言っていたから。
ポツリと広い玄関に靴を並べ、
勢い良く自分の部屋への階段を登った。
バタンッとドアを閉めて、ベットへダイブするとポケットの中のキャンディーを口へ放り込む。
とても酸っぱくて。
とても苦くて。
ビターオレンジと書かれた袋をくしゃりと握り締めた。
昨日知った。
期間限定はあと3ヶ月だと。
あと3ヶ月で1度なくなってしまうんだと。
私の精神安定剤。
そうとでも言っておこう。
このキャンディーを舐めているといつも心は落ち着いた。
悲しい味がするけれど、
切ない味がするけれど、
それでも私の心はそれを欲しがったの。
そんな味が幸せに変わるときがあると信じて。