ビターオレンジ。


そして、楽しそうに揺れる本宮君とその隣に並ぶ影を見ながら思った。


私の居場所は無くなったんだと。


いや、自ら失くしてしまったんだと。



どうしてかはわからない。

だけど、自分のせい。



何の解決もないまま隣の自分の家へと帰った。

曇り空が私を見て嘲笑っているようだった。



ポケットの中のキャンディーがコロリと転がって、歩くたびに音を立てた。

玄関に入り誰の靴もない家。


今日は斗間君、帰りが遅いって言っていたから。



ポツリと広い玄関に靴を並べ、

勢い良く自分の部屋への階段を登った。


バタンッとドアを閉めて、ベットへダイブするとポケットの中のキャンディーを口へ放り込む。


とても酸っぱくて。

とても苦くて。


ビターオレンジと書かれた袋をくしゃりと握り締めた。



昨日知った。


期間限定はあと3ヶ月だと。

あと3ヶ月で1度なくなってしまうんだと。



私の精神安定剤。

そうとでも言っておこう。



このキャンディーを舐めているといつも心は落ち着いた。


悲しい味がするけれど、

切ない味がするけれど、



それでも私の心はそれを欲しがったの。


そんな味が幸せに変わるときがあると信じて。

< 39 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop