ビターオレンジ。




気づけば寝ていたみたいで、リビングに行くがまだ斗間君は帰って来てないようだ。


珈琲を1人分淹れて砂糖を5杯入れる。

ポケットから取り出した残り一粒の飴を親指と人差し指で挟みかざして見る。


綺麗なオレンジとブラウンのマーブル模様。




が…無くなった。


正確に言えば、パクリと食べられた。



「ただいま。」


その私の大好きな声が聞こえたと共に。


「あー疲れた。…てか不味いね笑」





フワリと後ろから抱き締められた身体。

ほんのりと甘い香水の匂い、そして煙草の匂いがした。




それでもう、私とは違う大人で。

そういう付き合いもあるんだって実感した。




それにきっとなんにも考えずになんの抵抗もなく私を抱き締めたんだろうな。






わかってるけど…。


凄く悔しかった。




やっぱり私は斗間君が好きで、抱き締められただけで鼓動が早くなっちゃうんだもん。



弱い力で斗間君の腕から逃れると机の上のメモ帳を手に取る。


[おかえりなさい。お酒飲んで来たでしょ…]


少しムッとして書いたものを見せる。

するとそれに驚いた様に頷いた。





「なんでわかったの?」

[香水の匂いと煙草の匂いがしたから。]




「そっか。…でも仕事だからさ。そんな怒るなよ。」





確かにわかるよ。

でも、斗間君には咲さんという大切な人がいて…そういう所に行くっていうのはちょっと納得が出来ないというか。





ま、本当は自分が納得しないだけ。


まだまだお子様だって思われているんだろうなって思う。




だけど、その気持ちはクスクスと笑ってる斗間君には一生わからないんだ。


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