ビターオレンジ。
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甘いものは少しなら食べられるけど、そこまで好んで食べたりしない。


それに苺はアレルギーで食べられない。

チョコレートはビターじゃないと気分が悪くなる。




そう昔言ってたのを思い出した。


「食べないのは悪いし。でも食べられないし…甘いもの好きな也佳ならと思って。」




きっと本人はそれが何を表すのかなんて余り気にしていないのだろう。


複雑な気持ちなのは私だけで、





「その後輩さんって女の人でしょ?」


「え?うん。」





これが、ヤキモチって言うのかな。

ヤケクソに口に入れたチョコレートは甘いのに…

苦い気持ちばかり広がって。




「美味しいよ。」



美味しいか不味いかなんてわからなかった。



斗間君を想って誰かが作ったものを、
斗間君の事が好きな私が食べる。




普通に考えたら私は酷い女だ。

というかそもそも斗間君を好きになった時点で酷い女。





そんな事ばっかり考えて。




「ていうか普通に気づいてなかったけど、声出てるよ也佳…」


「あ。」



声が出る様になったことにも気づかなかった。



「どんだけ好きなんだか…。」





それに本当にそう実感した。

ん?なんて言われたけど、何でもないよって紛らしてしまえば何事もなかったかのように出来て。



自分自身のずるさに少し怖くなった。


手が進まず、食べきれなかったチョコレートは寂しそうに机の上に置かれてて、





どうかその後輩さんの想いに気づかないで欲しいと願う私は…



咲さんがいるんだからなんて偽りの理由を心の中で広げてた。


所詮はそんなの嘘で自分が嫌なだけ。





「咲さんがいるんだからね…」

「うん。わかってるよ。」








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