ビターオレンジ。
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ポンポンと頭を撫でられて、

それ、好きだなって…単純に思った。

だから。





「そんな顔…しないで。」





悲しくなる。
斗間君の気持はわからないけど、

私なりにわかるんだ。




斗間君程心はきっと痛くない。




だけど…私も痛い。





「泣くな…俺も悲しくなる」


止まらない涙がまた斗間君を苦しめる。


わかってはいるのに、




もうここにはいない咲さんの姿を探してしまう。




もうここには残っていない咲さんの、
母親の暖かさを探してしまう。



咲さんがいる。


そう言ったのは自分なのに、

ここには居ないじゃないかと泣いてる自分が居る。



斗間君は怒らなかった。

ただ、わかってるって悲しそうに言って。



それが自分がしてしまった事の重大さで。

触れてはいけない話だった。

言ってはいけない言葉だった。





「ごめんなさい…っ」


もし、今の泣いてばかりいる私を見たときに咲さんはどう思うだろうか。


悲しむ?

励ます?


一緒に泣いてくれる?



斗間君は、横に顔を振って…

「俺でごめん…。咲じゃなくてごめん。」




抱き締めてくれた。

ただただ、暖かかった。



ただただ、それにまた怖くなった。

自分を責める斗間君にそんな事ないよって言ってあげられない、





弱い私でごめんなさい。




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