曖昧な温もり
どうしてよいか分からずシーツを手繰り寄せ葛城に背を向けた。強引だったとはいえ合意の上なのは百も承知してる。
もともと私達の関係は恋人ではなくただの友達。そう。これはお互いに体だけのお遊び。割りきってしまえば簡単なことだ。胸の奥が痛むのには気づかないふりをした。
葛城がベッドから降り立ちシャワーに向かったのを見届けて私は素早く部屋を飛び出した。家に戻りシャワーを済ませ着替えてから大学に向かったものの体がダルくて仕方ない。
それもそうだ。朝からあんな行為をしたのだから自業自得。自分の浅はかさに落ち込みランチ中の食堂にもかかわらず机に突っ伏して反省した。
周りの喧騒が子守唄に聞こえてきたその時、テーブルをドンと叩く音が響き驚いた私は体を起こすことになる。
「おい。お前は逃げるのが趣味なのか?」
最高潮に機嫌の悪そうな葛城の顔が目の前にある。あまりの迫力に目を反らした。
「…そ、そんなことはないけど」
「じゃあ、どういうつもりだよ」
「だって、ほら。…あれは遊びでしょ?」
「へー。お前は遊びで俺と寝たのか?」
その声に、その言葉に、食堂にいた全員がこちらを凝視した。私の全身から血の気が引き今にも倒れそうな錯覚に陥る。
かろうじて残る力を振り絞り逃げようと試みたが腕はがっちり葛城に捕らえられ逃走は出来ない。周りの好奇な視線が痛すぎだ。