落雁
「じゃ、そうと決まったらまずは筋トレしないとね」
「あ、筋トレしてからなの?まぁいってらっしゃい」
ごっつは笑顔であたし達を見送った。
筋トレをしてから本格的に練習するスタイルは気に入っているようだ。
あたし達はリンクがある部屋を出た。
「それにしても司、いきなりだな」
「そう?遅かれ早かれ、弥刀ちゃんもそう思ってたでしょ」
「まぁ、確かに」
トレーニング室のドアを開ける。
微妙な時間帯のせいか、やっぱり人は居なかった。
「ねぇ弥刀ちゃん、どうせこのルールには納得してないんでしょ?」
「当たり前だ。あたしだけがお前に攻撃するだけで、何が面白い」
「そう言うと思った。なら、ここでやろうよ」
司は笑顔でそう言った。
ミットも何もつけない状態で、やりたいと言うのだ。
一瞬、怖気づいてしまった。
だけど、本来ならばミットなんてない。あたしは本気で当主を目指すなら、甘ったれてはいけないんだ。
そう思うと、気分が高ぶってきた。
「面倒な部長もいないし、できるのはここだけ」
「やろう」
そう言うと、司は笑った。
「そう来なくっちゃ、弥刀ちゃんじゃないよね」
あたしは前屈したり、アキレス腱を伸ばしたりと準備運動をした。
一方司は何もしない。余裕の表情だ。気に食わない。
「まずは、弥刀ちゃんからでいいよ。本気でお願い」
「あたしが手加減できるほど上級者じゃないのは知っているだろう」
あたしは右拳を固く握った。