落雁
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月曜日。
今朝もいつもの様に家族を起こして、父と喧嘩をして家を出た。
いつもと違ったことは、甚三が頬に傷を作っていた事だ。
やっぱり昨日は出ていたみたいだけど、甚三が怪我をするなんて珍しい。
本人は気にしていないようだけど、一体何があったのだろう。
「甚三、昨日の獲物はでかかったの?」
「お嬢、獲物だなんて野蛮な」
「やくざが言うなやくざが」
「…まぁ、でかかったですね」
運転している甚三の後ろ姿は何処か嬉しそうだった。
何か腑に落ちないなぁ。
いつも降ろしてもらう場所に着いて、学校に向かって歩く。
教材やらが入って、なかなかの重さの鞄をダンベル代わりに上げ下げしていると、冬の寒さも忘れる。
やっぱり体が鈍るのは良くない。
今日は肉体的にきつくなる柔道部に顔を出そうか。
そう考えている時だった。
「お嬢、風で捲れそうですよ」
下の方から柔らかい男の声がした。
「は?」
意味が分からなかった。
もしかしたら不審者かもしれない。どうせいい歳のおっさんだろう。
あたしは振り向いた。
するとそこには、あたしの予想と違った人物がしゃがみこんでいた。