落雁
「えーっと、神谷司でーす。趣味は…ないかな。特技…立ったまま靴下はけることかな?」
神谷司はやりきったような顔をしていた。
「趣味と特技だけじゃないか。しかも、どうでもいい特技しか聞いてないし」
「そんなにね、自分について語れる人も居ないと思うよ」
そいつは苦笑した。
今度は、まじまじとそいつの顔を見てみる。
妙に白い肌。ストレートな黒い髪。すっと伸びた鼻筋。綺麗な目が、まっすぐあたしを捕らえた。
「じゃあ、逆に僕が質問してもいい?」
「別にいいよ」
「腕、触らせてよ」
頭がついて行けなかったけど、数秒後にそれを理解することができた。
「腕ぇ?普通の腕っすよ」
「だって、昨日ダンベル上げてたじゃん。両手で合計40キロ」
渋々腕を差し出した。
すぐに生温い指があたしの二の腕を掴んだ。
「うわ」
「なにその奇声」
二の腕付近を掴んだり離したりしているそいつは、あたしに目をやった。
「細いのに、筋肉すごい」
一瞬ぐはっときた。
筋肉バカなあたしには1番嬉しい言葉…!
っていやいや、なにを言っているんだあたしは。
「というか女子?」
すぐにその言葉によって機嫌は損なわれた。