落雁



□ □ □



「行ってくるねー」

笑顔でそいつは手を降る。
あたしは笑えなかった。

熱は収まったけど、まだ喉は痛い。だけど、昨日よりはすこぶる好調だった。


「…何であんたと一緒なのよ」
「いいじゃん」

黒ベンツに当たり前のように乗り込む神谷。


本当に家に居るとは思わなかった。
玄関を出るときに、家から出てきた神谷を見てどれだけ驚いたことか。

当たり前のように京極家で生活しているんだから、本当にどれだけ生意気なんだ。


「学校行くと疲れるんだよね」

切実に神谷はそう溢した。

「まぁ、あの質問責めときたら当たり前だな」

あの状況下はあたしでも同情する。転入してまだ数日しか経っていないのに、全て分かりきったような疲労ぶりだ。
神谷はとても人気だ。主に女子に。

「前の学校ではそんな事なかったのか?」
「うーん」

神谷は少し笑って、何も答えなかった。
少し開いた制服の釦がだらしない。

「みっともないぞ、前閉めろ」
「学校に行くまで行くまで」

身形からしてだらしない奴だ。
釦くらい留めればいい物を。


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