落雁
「弥刀ちゃんてさ、部活とか入ってるの?」
「剣道部と、ボクシング部と、柔道」
「…部活掛け持ち?」
「本当は禁止だけどな」
隣で笑い声が聞こえる。
そちらの方を見ると、神谷が呆れたようにしてあたしを見ていた。
「疲れないの?毎日」
「毎日全部の部活に顔を出しているわけじゃないし、まぁ楽しいし」
「へぇ」
神谷は窓の外を見た。
「じゃあ、僕も入ろうかな」
「え」
ごっつがあたしを見下ろす。
珍しく困惑した表情を浮かべていた。
そりゃそうだ。あたしだって泣きたい気分だよ。
「みと、なんであいつがこんなむさくるしい部活に来たんだ」
神谷司の噂はあっという間に学校中に広まったみたいだ。
年上のごっつでさえも神谷のことを知っていた。
どうも、ごっつは綺麗な神谷のことを好きになれないようだった。
「神谷くん、君…ここの部活が何をして活動しているのか分かってる?」
「ボクシングでしょ?」
「殴るんだよ?!君の綺麗な顔を誰かが殴ってしまうのかもしれないんだよ?!」
ごっつは真面目だった。
ボクシング部には飛びぬけたイケメンは居ない。
みんな肉体は美しいが、顔のほうはどうも比例していない。
そんな部活に異色が入りそうだ。