落雁
「ボクシングはね、誰でも初めはモテたいって気持ちでやる不細工の競技なのよ」
「おい!部長が何言ってんだ!!」
思わず突っ込んでしまう。
「不細工がボクシングしてイケメンになっていくのはあるあるなんだけど、イケメンがボクシングを始めるってのはあんまり聞いたことないんだけど…」
そんな事ないだろうとあたしは心の中で突っ込んだ。
それくらい、神谷は異色なんだ。
「他の部活も見てみたら??」
「いや、ここがいい」
満面の笑みで神谷はごっつに握手を求める。
ごっつは至極残念そうな顔で握手に答えた。ひどい笑顔だ。
普通、数少ない部員が入ったら、よろこぶだろうに。
何でこんなことになってしまったのだろう。
ボクシング部にたまたま顔を出したら、そこには神谷が居たのだ。
本人に聞いても、理由は適当だと言うし。
部長に挨拶をし終えた神谷が帰ってくる。
挨拶といっても、かなり上から目線だったと思うが。
「弥刀ちゃん、女の子1人なんだ」
「後藤ちゃん居るよ」
「ごとうちゃん?」
「マネージャー」
眉を寄せた神谷。
部員は神谷に注目していた。
「みんな、練習ー」
ごっつの声がして、みんなそれぞれ広がった。
「今から皆は何するの?」
「今日はジムに行くからみんな用意してるんだよ」
「弥刀ちゃんは何するの?」
「あたしは向こうに行っても筋トレ。ただランニングマシーンがあるからあそこは好き」
「へぇ。じゃあ、僕も着いていこう」
神谷は笑った。
こんな奴がボクシングなんて出来るんだろうか。
うちのもんには敵わないけど、結構皆強いし。
「しゅっぱーつ」
意気揚々とした声色でごっつは皆に合図を出した。
あんまりジムは借りれないから、ボクシング馬鹿な皆にとって嬉しいんだろう。
大会も近いし。