落雁
バァン!!!
冷気が立ち込めた武道場に、竹刀と竹刀がぶつかりあう衝撃音が耳をつく。
途端に、相手の手から竹刀が落ちた。
なんだ、竹刀打ちぐらいで手を離すなんて腰抜けだなぁ。
まぁ仕方がないか。彼はあたしと同じ1年生だから。
「相変わらず京極は怪力だなぁ」
「先輩くらいしか相手できないよ」
その終始を見ていた部員があたしの周りに集まってくる。
竹刀を落とした彼は痛そうに両手をぶらぶらさせる。
「ほんっと、京極のパワーは男並みだよ」
「もっとしっかり構えなさいよ」
「構えの問題じゃないって」
可笑しそうにへらへら笑う彼。
冬場の剣道部はどの部活より厳しいとあたしは思う。
冷たい板の間相手に裸足な上に、冷気が立ち込める場内では薄っぺらい胴着1枚しか着てはいけない。
だけどあたしは始めて15分で全身から汗が吹き出た。
「俺、京極の相手嫌だよ」
「もっと鍛えろ!」
「男前だなぁ」
体は温まったと言うのに、部員はやる気が無い。
今日は部長もいないし、仕方がないから一旦武道場から出た。
「みと、今度は柔道?」
「ボクシング!」
武道場に笑いが広がるが、あたしは気にせずそこを出た。
ここの学校の魅力的な部分は、部活が多彩な事だ。
勿論そこを考慮して入学した。
あたしは剣道部とボクシング部と柔道部を掛け持ちしている。
本来掛け持ちは禁止されているのだが、入学の日に全身全霊で頼み込んだら例外として許可がおりた。
はじめは風当たりが強かったが、夏の大会で全てにおいて優勝をとったら先生達は何も言わなくなった。
寧ろ歓迎されたくらいだ。
校長に頼み込むことなんて、毎朝頑固オブキングの父に頼み込んでいる自分にとっては容易いものだった。
「みっ、みとぉおお!!」
ボクシング部の部室を開けた瞬間、強烈な匂いと強烈な力の強さで抱き締められた。
反射で頭上にある顔を殴る。
ぐふぉ、と声が聞こえてあたしを抱き締める腕は離れた。