落雁
つかんでいた手を離すと、頬の衝撃で後ろに倒れる男。
の腹を、あたしは両足で地面に押し込むように蹴った。
酷い音がして、男は冷たく固い地面に寝転がる。
よししめた。
あたしはそいつに跨って、胸倉をつかむ。
左の拳を固く握り締め、そいつに振り翳したとき。
「お嬢ちゃん!!!!」
少し低めの、男の声がした。
すぐに、その正体は現れる。
紺色の防寒具を纏った、警察官の人。
「そう、そう、あの人です」
後ろにさっきのおばあちゃんが小走りで着いてきている。
警察官が、慌ててあたしと男の間に入ってきた。
「このおばあさんのバッグを盗ったのは、きみかね」
眼鏡をかけた、優しそうな人だった。
後ろからぞろぞろ同じような格好をした警察の人がやってくる。
そして、数人がかりで倒れている男を起こし、後からやってきたパトカーに乗せた。
1人の警察官が、あたしの近くに来た。
「きみは、あそこの高校の子だよね」
「はい」
まだまだ新入りの警察官、という感じがした。
書類を書いている手がおぼつかない。
「名前を教えてくれないかな」
あたしの名前を紙に記入する。
それから住所や電話番号などを聞かれて、あたしもパトカーに乗せられた。