落雁
温かいパトカーの中、あたしの隣にはおばあちゃんが居る。
「ごめんなさいねぇ、私のせいで、こんな怪我を…」
おばあちゃんはあたしの頬を撫でる。
その冷たい手を見ると、血がついていた。
「わ、わ、触っちゃ駄目だよ。しかも、血の量に対して傷は小さいし」
「女の子の顔に傷ができてしまったら、どうしようと…」
おばあちゃんは眉を下げて、今にも泣き出しそうだ。
泣き出す代わりに、おばあちゃんはあたしの額にハンカチを当ててくれた。
パトカーは走り出した。
「あの、なんであたしも乗せられてるんですか…?」
わるいことはしていないはずだ。
あれはきっと、正当防衛。
「3人とも、とにかく病院に行かないとね。特に京極さん」
助手席に座っている、新人警察官(予想)は優しく笑った。
警察官の優しさはどうも信用ならない。
結局この後、責められたりするのかな。
いつの間にか手元には、置き去りにしたはずのあたしのスクールバッグがある。
おばあちゃんが持ってきてくれたのかな。
また右半身がずきずきと痛み出す。