今昔狐物語
(あ…何ときめいてるの私…!駄目よ!私は女郎、旦那はお客様なのよ!?)
相手はお客だと必死で心に言い聞かせ、営業スマイルを顔にはりつける。
「わ、わっちは振袖新造でありんすから、お相手できんせんが…おあがりなんし」
無理矢理に話題を変えて乗り切ろうと試みた。
その間にもほんのりと熱を帯びていく頬が何とも初々しい。
「おや、振袖新造でしたか」
「確かに…振袖を着ているね」
玖羅加が蛍の赤い振袖に視線をやる。
「…つまらぬな。俺達は見鬼の女郎が気になってここへ来たというのに…」
蛍は飛牙の言葉に首を傾げた。
「見鬼の、女郎?」
誰のことだろうか。
(うちの妓楼に“見鬼”なんて名前の人、いたかな?)