今昔狐物語
「一晩くらい良いでしょう?貴女を独占してみたいのです」
吐息まじりの囁きが耳にかかる。
うるさく鳴る心臓。
甘やかな誘惑。
のってしまいそうになる。
けれど、後一歩のところで蛍は遊女である自分を思い出した。
「やめておくんなんし!」
水真馳の胸をドンと押す。
腕から逃れた彼女は妓楼の中へと駆け込んでいってしまった。
「おや、振られたな。水真馳」
「ふふ、諦めませんよ」
彼女が機嫌を損ねてしまったのなら今宵、これ以上の攻めは禁物だ。
(明日も来ましょうか)
柔らかい笑みの下で、水真馳は狙った獲物をどう陥落させようか楽しそうに悩み始めたのだった。