今昔狐物語



 翌日の午前中。

はたきを片手に蛍は部屋の掃除をしていた。

雑用も振袖新造の仕事の一つ。

姐さんである夕霧の部屋の掃除を終え、他の部屋の手伝いに回る。


(昼見世が始まるまでに終わらせなきゃ…!)


昼見世はだいたい午後二時頃から。

主なお客は夜遊びが禁じられている武士達だ。


二階のお座敷で、まだ清掃の済んでいない部屋を見つけた蛍。

一人でせっせと手を動かしていた時だった。


「蛍殿」


窓の方から男性の声がした。

「え?」

そちらに振り向くと、どこから入ってきたのか、窓の傍に一匹の白狐が座っていた。

「ひゃあ!?き、狐!?」

「こんにちは。また来ましたよ」

美しい白狐がしゃべった。


(も、もしかして…)


昨夜のことを思い出す。


「旦那…?」


 
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