今昔狐物語
「だ、旦那!やめておくんなんし!誰か来…」
「旦那ではありません。水真馳です。さあ、呼んでみて下さい」
抱き寄せられ、首筋に舌を這わされた。
ねっとりと肌を味見される感覚が身体を熱くさせる。
「あ……っ」
まだ男性を知らぬ蛍にはそれだけで十分だった。
緊張と羞恥で高ぶる思考。
火照り出す頬。
「み……水真、馳」
何も考えられなくなった蛍は、ただ教えられた名前を紡ぐ。
「はい。よくできましたね」
水真馳の顔が離れた。
官能を刺激する舌の動きから解放され、蛍は安堵の溜息をつく。
しかし、安心と同時に名残惜しさも覚えてしまった。
そんな自分に気づいて、恥ずかしくなる。
(わ、私…なんて浅ましい…!)