今昔狐物語

客をとるようになれば、これが普通になるのだろうか。

蛍がぐるぐると考えていると、後ろから水真馳ではない男性の声がした。


「どうだ、終わったかい?」


部屋に入ってきたのは雑用を担当する「若い衆」の一人。

妓楼にはこうした男性が多くいる。

「えっ!?あ…!」

不意なことで蛍は慌てた。


(旦那が見つかった!?)


と思ったのも束の間。

「あれ?」

つい数秒前まで目の前にいた水真馳がいない。

「う、嘘!?」

焦って窓辺に駆け寄る。


(消えちゃった!?あんな一瞬で!?)


「ん?どうした?まだ終わってないのかい?」

後ろで若い衆が何か言っているが、蛍は聞いちゃいなかった。


(化け狐だもんね…)


サッと現れてパッと消える。

まさに化かされたような感覚。


(でも、夢じゃない)


蛍はまだ熱が残る首筋にそっと触れた。






 
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